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2010年11月

福家貴美『若葉』(市井社)

偶然手にした、福家貴美(ふけ・きみ)さんの五行歌集。
食べものが出てくる詩に、おいしそうなのがあります。たとえば、

小麦畑という
うどん屋に
蒟蒻おでん
三角稲荷
ふる里の味ほおばる

うどん! 懐かしい気持ちにさせるイメージです。埼玉県に住んでいたころを思い出しました。
関東地方では、立ち食いそば屋では、立ち食いそば屋というぐらいで、うどんよりそばのほうが人気があるのですが、東武東上線沿線には、店で打った、こしのあるうどんを出す店が、何軒かありました。そばも、あるにはあるのですけど、そばのほうは、工場から届く出来合いのもの。ああいう店では、絶対にうどんに限ります。
おでんも、いなり寿司も、うちで作ってもらった記憶がありません。買ってきて食べていたのですね。でも、なつかしいです。食べたくなります。いなり寿司は、立ち食いそば屋のサブメニューにありました。
ふるさとの味とか、いわゆる「おふくろの味」とかいうのは、わたしは、思い出せないです。せいぜい、カレーライスか、クリームシチューか。
わたしの味の嗜好は、小学校のときの学校給食で形成されたのだと思います。

こんな詩もあります。

瑞々しさが去って
コクと旨みが
顔を出す
切干し大根の
乾き具合

大根を干しているのでしょう。生の大根は、みずみずしくておいしいのですけれど、切り干し大根は、生とは違った、また別の、切り干し大根独特のおいしさがあります。「コクと旨み」ですね。生から少しずつ切り干しに変化していくところを、味を想像しながら描写しているところが、おもしろいです。

家庭菜園の詩もあります。

「こんにちは」「こんにちは」
誰かれなく声かけて
青い空の下
9坪の
農園デビュー

農場を分割して、一般の人に貸している農園なのでしょう。栽培する楽しさが伝わってくる詩です。
野菜など、買って食べたほうが、安いし、早いし、効率がいい。それでも、あえて、自分で栽培したいという欲求がある。栽培することを楽しむ文化が、自分の中にも流れているのだなあ、と感じます。

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